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効能のメカニズム、温泉はなぜ体に効くのでしょう?

 温泉は、なぜ体に良いのでしょうか。効能のメカニズムは複雑です。温泉そのものの温熱作用、含有成分による化学・薬理作用、水圧・浮力・摩擦抵抗などの物理作用、さらに温泉他の自然環境、天地効果などさまざまな要素が絡み合い中枢神経系、内分泌系、免疫系を介して体の機能を正常化し、体調が整うと考えられます。
 このような温泉の効用を、「総合的生体調整作用」といいます。
ここでは、温泉の効用を「総合的生体調整作用」と「成分・泉質」に分けてご紹介します。



温泉の泉質と効能

二酸化窒素泉(炭酸泉)
炭酸ガスが溶け込んだ無数の泡が肌にまとわりつくところから別名「泡の湯」と呼ばれている。泉温は低<、色は、無色か白濁。炭酸ガスが皮膚や肺から吸収されると、皮膚や粘膜の毛細血管を刺激して血管を拡張させるため血流がよくなり、血圧が下がる。その結果、心臓に負担がかからず心臓病に効果的といわれる。また、温度が低<でも湯から上がった後に体がポカポカしてくるので、低温でも保温効果かある。
効能:心臓病・高血圧ほか ※下痢の時は飲用不可
塩化物泉(食塩泉)
塩化物泉は日本で最も多い温泉で、お湯をなめると塩辛い味がする。別名「熱の湯」と呼ばれ、保温効果が高い。また、消化機能を促進するため「胃腸の湯」といわれる。人浴後、皮膚表面のタンパクや脂肪と塩分が反応して皮膚を皮膜状に覆うため汗の発汗を防ぎ、保温効果が強まる。これによって末梢の血流が改善し、炎症によって生じた物質の排出が促進される。
効能:筋肉痛・神経痛・リウマチほか ※腎臓病・高血圧症の方は飲用不可
炭酸水素塩泉(重曹泉)
石鹸が良<溶け、アルカリ性温泉。肌が滑らかになるので「美人の湯」と呼ばている。アルカリ性で皮膚の角質層を軟化させ、さらに皮脂を乳化させるため油にしみ込んだ汚れが取れ、肌がツルツルとなる。
効能:美肌作用・皮膚病・火傷ほか ※腎臓病・高血圧症の方は飲用不可
炭酸水素塩泉(重炭酸土類泉)
陽イオンのカルシウム、マグネシウムにより鎮静効果がある。けいれんを抑えたり、炎症も和らげる。
効能:慢性皮膚病・アレルギー疾患・じんましんほか ※腎臓病・高血圧症の方は飲用不可
鉄泉(炭酸鉄泉と緑ばん泉)
鉄分を含む、無色透明だが空気に触れると酸化して褐色になり効果が低下する。鉄は、血液の中で、赤血球のヘモグロビン成分になり酸素を運搬する。鉄が欠乏すると赤血球が減少し、貧血になる。貧血には飲用も効果的。
効能:貧血・慢性関節リュウマチほか
硫黄泉
お湯は白<濁り、卵の腐敗臭に似た硫化水素特有の臭いがある。硫黄泉の主成分である硫黄(硫化水素)が皮膚や肺から吸収されると、皮膚や粘膜の毛細血管を刺激して血管を拡張させるため、血行がよくなり、血圧を下げる働きをする。その結果、心臓に負担がかからず心臓病に効果的といわれる。「心臓の湯」
効能:心臓病・皮膚病ほか
※皮膚、粘膜の過敏な人、光線過敏症の人の浴用不可・下痢の時は飲用不可
酸性泉
 硫化水素、明ばん、緑ばん(硫化鉄)を含む、無色透明から徴黄色が特徴で、泉温か高く、飲むと酸っぱく、臭いが強い。入浴すると肌に刺激がある。酸性泉の皮膚への刺激で一時的に炎症を悪化させる。やがて症状は治まり皮膚表面の角質層が剥がれ落ちるが、その下で皮膚の修復が行われる。これは皮膚本来が持っている自然治癒力の効果といわれる。
効能:水虫・慢性の皮膚病ほか ※皮膚、粘膜の過敏な人、光線過敏症の人の浴用不可
単純温泉
さまざまな成分を含むが、いずれも規定量に満たない温泉を総称して単純温泉と呼ぶ。ただ、泉温か25℃以上ある。体への刺激も少な<、作用は穏やかで万人向き。一般的に手術後の療養や病後の回復に効果的といわれる。
効能:神経痛ほか
放射能泉
俗にラジウム温泉、ラドン温泉と呼ばれる。放射能といってもごく微量のため人体への影響はない。ラドンは、無色無臭の不活性な気体であり、免疫機能向上、鎮痛作用、利尿作用などの効果が期待できる。このことは、多量では有害作用を待つが、少量では逆に有益な効果になるという「放射線ホルミシス効果」が要因といわれる。
効能:痛風・慢性の尿路疾患・動脈硬化・高血圧症ほか
硫黄温泉
「硫酸イオン」は、硫酸塩泉に含まれている成分で、皮膚や粘膜から人ると、血管を拡げ、血液の流れを良<する。硫酸塩泉に入った後は、血行がかなりよくなり、体の温もりが持続する。またそれぞれの成分イオンによって効能に固有の特徴が生じる。
①カルシウム硫酸塩泉(石膏泉)
 効能:高血圧症・動脈硬化・脳卒中・慢性関節リュウマチほか ※下痢の時は飲用不可
②ナトリウム硫酸塩泉(芒硝泉)
「傷の湯」「中風の湯」とも呼ばれる
 効能:高血圧症・動脈硬化・外傷ほか ※下痢の時・腎臓病・高血圧の方は飲用不可
③マグネシウム硫酸塩泉(正苦味泉)
 効能:脳卒中後の麻痺の改善・動脈硬化・切り傷ほか ※下痢の時は飲用不可
④アルミニウム硫酸塩泉(明ばん泉)
 効能:水虫・皮膚病ほか ※下痢の時は飲用不可

一般財団法人 北海道薬剤師会公衆衛生検査センター発行の「湯ったり読本」(2009.1発行)より参照させて頂きました。

温泉とは

温泉法では、温泉を以下のように規定しています。

温泉法 第2条 地中から湧出する温水、鉱水及び水蒸気その他ガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表 に掲げる成分又は物質を有するものをいう。   

( 昭和23年7月10日 法律第25号 )

温度(温泉源から採取されるときの温度とする。) 摂氏25度以上
物質名 含有量(1キログラム中)
溶存物質 (ガス性のものを除く) 総量  1,000 ミリグラム 以上
遊離炭酸 (CO2)   250 ミリグラム 以上
リチウムイオン (Li'')  1 ミリグラム 以上
ストロンチウムイオン (Sr'')  10 ミリグラム 以上
バリウムイオン (Ba'')   5 ミリグラム 以上
フエロ又はフェリイオン (Fe'',Fe''') 10 ミリグラム 以上
第一マンガンイオン (Mn'') 10 ミリグラム 以上
水素イオン(H'') 1 ミリグラム 以上
臭素イオン (Br')     5 ミリグラム 以上
沃素イオン (I')   1 ミリグラム 以上
ふっ素イオン (F')   2 ミリグラム 以上
ヒドロひ酸イオン (HASO4) 1.3 ミリグラム 以上
総硫黄 (S) 
【HS'+S2O3''+H2Sに対応するもの】
1 ミリグラム 以上
メタほう酸 (HBO2) 5 ミリグラム 以上
メタけい酸 (H2SiO3) 50 ミリグラム 以上
炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)
340 ミリグラム 以上
ラドン (Rn)  20 (100億分の1キューリー単位)以上
ラジウム塩(Raとして) 1億分の1ミリグラム 以上

  • 上記の1.または2.のいずれかに該当するものを温泉という。              
    • 温度が25℃以下でも2.に相当する量の物質を含有するものは、温泉と称してよい。(冷鉱泉)